広島県福山市の公認会計士・税理士の三吉孝治(みよしたかはる)です。
今回はクラウド会計ソフトの自動仕訳ルールについて述べてみたいと思います。
自動仕訳ルールは、ある取引について一度仕訳ルールを登録しておけば、次回からは同じ取引が発生したときに自動で仕訳が作成されるクラウド会計ソフトの便利な機能です。
例えば、預金データに電気料金の引き落としの取引があったとします。
預金データは下記のように会計ソフト内に自動で取り込まれてきます。
日 付:2016-08-25
金 額:-5,000円
取引内容:中国電力 電気料金 8月分
ざっくり言うと、自動仕訳ルールは取引内容(中国電力…)と勘定科目を紐づけるかたちで登録します。そうすると、次に同じ取引が発生したときに取引内容で紐づけられた勘定科目で仕訳を自動作成してくれます。
つまり、会計ソフト内に取引内容と勘定科目のマスターを作り、ある取引が発生したときにマスターから処理を返すイメージです。エクセルをよく利用される方であれば、vlookup関数をイメージしていただければピンと来るはずです。
自動仕訳ルールは、正しくルールを登録すれば、何もしなくても自動で仕訳が作成されるという、とても便利な機能です。しかし、ルールの登録を誤れば、自動仕訳が機能しなかったり、誤った仕訳が作成され続けます。
例えば、自動仕訳ルールを登録するときに、「中国電力 電気料金 8月分」と勘定科目の「水道光熱費」を紐づける自動仕訳ルールを登録すると、翌月の9月の電気料金について自動仕訳されません(来年の8月分の電気料金は自動仕訳されます)。それは、8月分という特定の文字列が入っているためです。 このケースでは「中国電力 電気料金」(部分一致)で仕訳ルールを登録すれば、毎月の電気料金が水道光熱費として処理されることとなります。
また、「中国電力 電気料金」と勘定科目の「前払費用」を紐づける誤った自動仕訳ルールを登録したとします。すると、会計ソフトは何の疑いの余地もなく、毎月、電気料金を前払費用として処理します。ルールに基づいた処理を高速にやってくれるのが長所ですが、そのルールが本当に正しいかどうかまでは判断してくれません。
※分かりやすい例で電気料金を取り上げましたが、電気料金のように誰もが経費として計上するものについては、freeeやMFクラウドといったクラウド会計で先頭を走っているソフトだと、ビッグデータの解析で自動仕訳ルールを登録する際に、勘定科目として「水道光熱費」を候補としてあげてきてくれます。ただ、あまりデータのないその事業者様特有の取引だと候補としてあがってくる勘定科目の精度は相対的に落ちてしまいます。
自動仕訳ルールの登録を含め、クラウド会計で経理業務を効率化するためには、数字の流れをきれいにする仕組みを構築する必要があります。そこを我流でしてしまうために、クラウド会計でいまいち経理業務の効率化ができないとか、最終的な決算書の金額が無茶苦茶になってしまうなどということがおこります。
決算・申告直前にそうならないためにも、お早めにクラウド会計に詳しいお近くの会計事務所の税理士に相談いただくのが、よろしいかと思います。
わたしは、クラウド会計は経理業務だけでなく、それをきっかけに、そのほかの業務・オペレーションの効率化にもつながると思っていますので、専門家に相談すれば、会計面以外でもいいアドバイスがもらえると思います。