2017年の春先から、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価額が急上昇し、「税金はどうなるの?」というご相談を受けていました。譲渡所得になるのか、雑所得になるのか、見解が分かれていました。春先は、ビットコイン等の仮想通貨は「通貨」ではなく、「モノ」ということで、ゴールド(金地金)と同じ扱いとなり、ビットコインの使用から生じた所得は譲渡所得に分類されるという見解が多数でした。しかし、この度のタックスアンサーで「原則として、雑所得」という見解が示されました。
No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
(所法27、35、36)
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも該当しない所得のことを言います。(所得税法35条)。
(STEP1)
雑所得は、公的年金と公的年金以外に分かれますが、ここでは公的年金以外の計算式「総収入金額 – 必要経費 = 雑所得」で計算します。
例えば、ビットコインを50,000円/BTCで購入し、450,000円/BTCで売却した場合は、雑所得は400,000円(450,000円-50,000円)となります(消費税やその他の諸経費は無視しています)。
(STEP2)
雑所得の金額は、給与所得・事業所得等の他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、所得金額に税率を乗じて、納める税額を計算します(総合課税)。
上記(STEP2)で、雑所得と各所得を合算しますが、不動産所得、事業所得、譲渡所得(総合課税)、山林所得がマイナスの場合は、雑所得との損益通算(利益と損失を相殺すること)ができるのに対し、雑所得がマイナスの場合は、各所得と損益通算をすることができません。
すなわち、
▶ビットコイン等の仮想通貨の使用で利益を出した場合
不動産所得、事業所得、譲渡所得(総合課税)、山林所得で赤字があれば、損益通算で所得金額を圧縮でき、税額を少なくすることができます。
▶ビットコイン等の仮想通貨の使用で損失を出した場合
その他の各所得で黒字が出ていても、損益通算できず、所得金額を圧縮できません。
また、その損失を翌年以降に繰り越すこともできません。後に説明する事業所得は、青色申告をされていれば、翌年以後3年間繰り越すことができます。すなわち、黒字になった年にだけ税金がかかることになります。
所得税は累進課税制度がとられているため、所得金額が大きければ大きいほど、高い税率が適用されます。
上記で計算された所得金額に応じた税率により、税額が計算されます。
No. | 所得金額 | 税率 | 控除額 |
⑴ | 195万円以下 | 5% | – |
⑵ | 195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
⑶ | 330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
⑷ | 695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
⑸ | 900万円を超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
⑹ | 1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
⑺ | 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税も10%課税されますので、最高税率は所得税45%+住民税10%=55%となります。
個人事業主がその事業から得た所得のことをいいます。ただし、不動産所得、山林所得、譲渡所得になるものは除きます(所得税法27条、26条)。
(例えば、以下のような場合があげられます。)
青色申告が条件となりますが、事業所得に損失があり、他の所得と損益通算をしても、なお損失がある場合に、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰越すことができ、翌年生じた所得から控除することにより、将来の所得税を少なくすることができます。
一方で、前年にも青色申告をしており、所得税を支払っている場合には、損失の繰越をせず、前年分の所得税の還付を受けることもできます。