個人事業主として起業・創業されてから業績が順調に推移され、そろそろ会社設立(法人成り)をご検討の方が多く、会社(法人)設立についての相談を多く受けています。
会社設立の動機で多く聞くのは、「事業をスケール(拡大)するにあたって、個人事業主では相手にされない」ということです。
また、2023年10月から開始されるインボイス制度によって、会社設立による消費税納税義務免除のメリットが失われるケースもあるため、最大限受けるためには2021年(令和3年)10月までに会社を設立することを考えられている方もいらっしゃると思います。
そこで、会社設立のメリット、デメリットについてまとめてみました。
一般的には、個人事業主で事業をするよりも会社組織で事業をする方がその「信用力」が高まります。個人事業である程度の規模になってきて、より事業を拡大しようとすれば、会社設立する方がいいでしょう。
会社によっては、個人事業主と取引をしない、個人事業主だと与信条件で不利になるということもあります。実際、企業から「会社組織にすれば与信条件をよくできる。」と言われるケースもあるようです。また、自治体の仕事をとるときに、自治体によっては、個人事業主の入札ができないなどの制限を設けているケースもあります。
そのほか、資金調達、人材採用についても有利にはたらくことがあります。
会社設立することで、個人とは別人格の会社(法人)を持つことになります。株式会社、合同会社を設立するのであれば、出資者は間接有限責任となりますので、もし仮に、事業がうまくいかなくても、出資者は出資額を限度とする責任しか負わず、個人財産には及ばないということになりますので、事業リスクと個人財産を分離することが出来ます。
ただし、金融機関からの借入金について個人保証している場合は、個人財産にもその影響が及びます。
個人事業主は1月~12月が事業期間になります。一方で、会社は決算期を自由に設定することができますので、事業期間を自由に設定することが出来ます。
売上の季節的変動を踏まえたうえで、決算期を設定すれば、計画的な節税策を講じることも可能となります。
消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円以上となると消費税を納税しなければなりません。基準期間は、当該事業年度の前々事業年度となります。
したがって、会社を設立した場合、基準期間となる前々事業年度がありませんので、原則として、消費税の納税義務が免除されること(消費税の免税事業者)になります。
ただし、資本金を1,000万円以上とする場合や課税事業者を選択した場合には課税事業者となります。また、基準期間については、例外的な取り扱いがありますし、その他の要件(特定期間の要件)などについてもご留意ください。個人事業主は、総収入金額から必要経費を差し引いた金額が事業所得となり、その事業所得をベースに所得税が計算されます。一方で、会社設立すると、代表者は役員報酬(給与)というかたちで所得を得ることになり、給与所得となり、その給与所得をベースに所得税が計算されます。
事業所得は、青色申告承認申請書を提出し、複式簿記で記帳をすれば、最大で65万円(※)の青色申告特別控除を受けることが出来ます。一方で、給与所得には給与所得控除があり、所得金額に応じて65万円から220万円までの控除を受けることができます。
また、家族を役員にし、所得を分散させることで、社長1人で給与を受けるよりも所得税等を節税することが出来ます。ケースにもよりますが、数十万から数百万円の節税ができます。
(※) | 個人事業主の方は、平成30年(2018年)の税制改正で、2020年分以後の確定申告から、青色申告特別控除が現行の65万円から55万円に引き下げられます。ただし、e-Taxを利用して申告するか、電子帳簿保存をしていれば、青色申告特別控除65万円が維持されます。 |
個人事業主から会社設立することで、節税手段が増えます。
その中の一つとして、例えば、「出張手当による節税」があります。出張手当については、個人事業主は出張手当が経費となりません。一方、会社を設立して、出張旅費規程を整備し、出張手当が適正額であれば、①所得税、住民税が非課税、②社会保険料が対象外、③旅費交通費で経費計上でき法人税の節税、④消費税の仕入税額控除にできる(海外出張を除く)といった、多方面にわたった節税効果があります。
また、業種によっては、会社(法人)設立をすることで相続税対策をすることもあります。
個人事業では事業承継という概念がないので、事業承継をする場合、手続きが煩雑になります。また、許認可等についても個人に帰属しているので、承継が出来ません。一方で、株式会社(※)であれば、株式譲渡(売買、贈与、相続)するだけで、事業をそのまま承継させることが出来ます。
(※) | 合同会社の持分の譲渡には注意するポイントがいくつかあります。 |
会社設立をする際に資本金として会社に出資をすることが必要となります。出資は一般的には金銭による出資となりますが、平成18年(2006年)施行の会社法から最低資本金制度(株式会社1,000万円以上、有限会社300万円以上)が撤廃され、1円からでも会社設立が可能になっています。
しかし、いくら資本金1円でも会社設立ができるといっても、会社設立登記をすると、資本金などの情報は多くの人に見られることになりますので、資本金1円だと恥ずかしい思いをするでしょう。まっとうな事業をされるのであれば、資本金1円はやめた方がいいです。
したがって、ある程度のまとまった資金を準備する必要があります。
個人事業主は、赤字の場合は、住民税の均等割5,000円ほどを負担することになります。一方、会社は、赤字であっても資本金、従業員の状況に応じて、法人住民税を最低でも70,000円ほど負担しなければなりません。個人事業主のときと比べるとその負担額が大きくなります。
会社設立すると、社会保険(健康保険、厚生年金など)に加入することが義務付けられています。従業員だけでなく、社長も原則として加入しなければなりません。従業員に係る社会保険料のうち半分は会社負担となり、会社が支払うこととなります。
ただ、社会保険の加入が必須なことに関しては、会社設立をする大きな動機になっている事業者も一定数いますし、従業員を雇うには、社会保険に加入していることは、大きなメリットにもなり、会社設立のデメリットと言えないところもあります。
以上が会社設立の大きなメリット・デメリットとなります。デメリットは、一言で言うと、「資金が必要」ということです。しかし、事業をするには必ず資金は必要ですし、また、その裏返しが「信用力」というメリットにもつながってきます。
メリットについては、そのほかにもありますので、状況に応じてご提案致します。
会社設立には、事業者様の様々な目的やタイミングがありますので、その目的やタイミングをお聞きし、シュミレーションをしたうえで、安心した会社設立をご提案できればと思います。
また、会社設立は様々な行政庁等に書類を提出しなければなりません。行政庁等の休みも考慮するとスムーズに言っても早くて2週間はみとかないといけません。事務手続きも手順やコツがあり、スムーズに会社設立手続きが出来るようにトータルでサポートいたします。